歯科医師が自分の口に「銀歯」を入れない理由
先日、患者さんに「銀歯にしますか? セラミックにしますか? ジルコニアにしますか?」と治療の選択肢をご説明しているとき、ふと気づいたことがありました。
私の同級生や知り合いの歯科医師を思い浮かべても、自分の口に銀歯を入れている人は、ほとんどいないのです。
もし歯科医師自身が治療を受けるなら、多くはセラミックやジルコニア、ゴールドなど、生体との親和性や長期的な安定性を考えた素材を選びます。
では、なぜなのでしょうか。
少し話は変わりますが、マーガリンについて考えてみてください。
マーガリンにはトランス脂肪酸を含む製品があり、過去には健康への影響が問題視され、多くの国で使用規制や削減が進められてきました。
WHOも工業的に作られたトランス脂肪酸の排除を推進しています。
それでも、長年にわたりパンやお菓子など多くの食品で使われてきた理由は、とてもシンプルです。
価格が安いから。
味だけではバターとの違いが分からないという人も少なくありません。
しかし、コストだけを理由に選ばれているものが、必ずしも「最善」とは限らないのです。
実は、この考え方は歯科治療にも少し似ています。
保険診療で使われる銀歯(金銀パラジウム合金)は、丈夫で費用を抑えられることから、日本では長年標準的な治療材料として使用されてきました。
一方で、金属は長い年月の中で口の中でわずかにイオン化し、金属アレルギーとの関連が指摘されることもあります。
また、見た目や適合性、生体親和性などを考慮すると、セラミックやゴールドを選ぶ歯科医師が多いのも事実です。
もちろん、銀歯を入れたからといって必ず健康被害が起こるわけではありません。
しかし、「保険だから」「安いから」という理由だけで素材を選ぶのではなく、それぞれのメリット・デメリットを理解したうえで選択することが大切です。
今ではほとんど見かけなくなりましたが、以前は「アマルガム」という、水銀を含む歯科材料が使われていた時代もありました。
当時は一般的な治療材料でしたが、その後、より安全性や審美性に優れた材料が普及し、現在ではほとんど使用されなくなっています。
歯科医療の材料は、このように時代とともに進歩しています。
セラミックやジルコニア、ゴールドは保険適用外になることも多いため、費用は高くなります。
しかし、見た目だけでなく、生体への親和性や耐久性、長期的な口腔環境まで考えると、歯科医師自身が選ぶ理由もそこにあります。
また、保険診療でよく使われるコンポジットレジン(CR)も非常に優れた材料ですが、適応症例や使用部位によって向き・不向きがあります。
虫歯を治すときは、「穴が埋まれば終わり」ではなく、「どんな材料で治すか」まで考えることが、将来のお口の健康につながります。
とはいえ、本当に一番良いのは、そもそも被せ物や詰め物が必要にならないことです。
虫歯や歯周病を予防し、定期的に歯科医院でメンテナンスを受けることで、大切な歯を長く守ることができます。
当院では、フィンランド式の予防歯科を取り入れ、除菌治療を含めた虫歯・歯周病予防に力を入れています。
「一番良い治療は、治療をしなくて済むこと。」
そのためにも、ぜひ定期検診を習慣にして、お口の健康を一緒に守っていきましょう。




