噛み合わせが人生を変える 〜歯並び矯正は「見た目」だけではない〜
先日、ある患者さんが来院されました。
「歯並びを治したい」というご希望でしたが、よくお話を伺うと、ただの見た目の問題ではありませんでした。
その方は、自転車事故に遭ったことをきっかけに噛み合わせが狂い、食べ物を噛めない・食べられないだけでなく、頭痛やめまいに苦しんでいました。
14軒の歯科医院を回っても改善せず
最初に行った近所の歯科医院では「噛み合わせを調整しよう」と言われ、歯を削られました。
しかし削るたびに状態は悪化し、頭痛やめまいがひどくなり、倒れそうになるほど。
2軒目では「どうしようもない」と断られ、3軒目でも歯を削られたり矯正を勧められたりしましたが、具体的な治療法は示されませんでした。
結局、14軒もの歯科医院を回り、最終的には旧東京医科歯科大学(現 東京科学大学)にまで紹介されました。
しかし、そこでも明確な治療方法は提示されなかったそうです。
私のYouTubeを見て来院
そんな中、私のYouTubeを見て「ここしかない」と思い来院されました。
実際に正しい噛み合わせをシミュレーションし、試していただくと、握力や体の柔軟性が一気に改善。患者さんは感動して泣き崩れてしまったほどでした。
これまで14軒の医院で削られるだけだったのに、私は逆に「削ってはいけない」と伝えました。むしろ噛み合わせを“上げる”必要があるのです。
応急的にマウスピースを装着していただくと、「すごく調子が良い」と笑顔を見せてくださいました。
なぜ大学でも治せないのか?
ここで考えさせられるのは、日本の歯科教育です。
歯科大学のトップレベルである旧東京医科歯科大学でさえ、見た目を整えることや虫歯を削って詰めるといった「対症療法」中心の教育しか行っていないのが現状です。
たとえば虫歯治療。虫歯菌が残ったまま削って詰めても、根本的な治療にはなりません。これは、糖尿病の人に「あなた太ってるから糖尿病です」と診断するようなものです。
本来なら血糖値を測って原因を特定するはずですよね。
ところが歯科では「虫歯がある → 削る」「歯並びが悪い → 見た目を整える」という流れにとどまり、原因を深く追求しないまま治療が行われてしまうのです。
見た目ではなく「人生を変える矯正」を
フィンランドなどでは原因に基づいた除菌治療や根本的なアプローチが進んでいますが、日本はまだ遅れています。
矯正も「歯並びを綺麗にすること」がゴールになりがちですが、私が目指すのは「体に本当に合った噛み合わせ」を作ること。
噛み合わせを正しく整えると、頸椎や胸椎、腰椎の位置も改善し、姿勢や体調そのものが良くなります。
つまり、ただ「見た目を美しくする矯正」ではなく、「人生を幸せにする矯正」なのです。
今回の患者さんも、一般的な矯正相談であれば「歯並びはきれいだから必要ない」と言われていたでしょう。
しかし実際には、体の不調の原因は噛み合わせにあり、適切に整えることで心身ともに大きく改善できたのです。
医療の本質に立ち返る
私自身、26年間歯科医を続けてきて、今回のケースは改めて「噛み合わせの重要性」を痛感させてくれました。
シミュレーション作成に朝5時までかかることもあり大変ですが、それによって患者さんの人生が変わるなら、これほどやりがいのある仕事はありません。
「見た目」だけでなく、「体と人生を支える矯正」。
それが私の目指す“幸せ矯正”です。