歯ブラシで、何分磨いていますか?

一体どのくらい歯ブラシで磨けば、歯垢を全て落とすことが出来るのか?

皆さんは、どのくらいの時間が必要だと思いますか?
5分?15分?
自分ではそこまで時間をかけないけれど、かなり多く見積もって、
30分?

5分だって大変なのに、30分間も歯を磨き続けるなんてまず出来ない
けど、そのくらい磨けばきれいになるんじゃないかと、思ったりしま
せんか?

では、正解を発表します。
『4時間~4時間半の時間を要す』というのが、色々な論文、
実験などで検証した結果です。

それほどの長い時間をかけなければ、100%きれいにならないのです。
30分だって無理なのに(実際は15分だって難しいと思います)、4時間も
歯を磨き続けるなんて、仮に磨き続ける根気があったとしても、出来ませんよね。

しかも、毎食後に4時間ずつ磨くとすると、1日の内12時間を歯磨きに
費やすことになるわけです。
1日24時間のうち半分を、歯を磨く時間に費やす。
一生のうち半分の時間を、歯を磨くことに充てるなんて、実際問題として
不可能です。
「それだけの時間を費やせば、虫歯にも歯周病にもならないのですよ」と、
保証されているとしても。

そこまで歯磨きに時間をかけなくても、虫歯や歯周病に対する不安を
抱えずに生活していくことはできないものなのでしょうか?

個人としてではなく、国家として、国民の口腔ケアに向き合った国があります。
北欧のスゥエーデンでは、30年ほど前に国家予算の三分の一を使って、
国民の口腔ケアを行ない、新しい仕組みを作ったのです。

その時から歯科衛生士が開業できるようになりました。
今の日本もそうですし、当時のスゥエーデンでもそうでしたが、
歯科衛生士は、歯科医のもとでスタッフとして働くことができるものの、
歯科衛生士単体で開業することは出来ませんでした。

それが、スゥエーデンでは衛生士が開業出来るように変わりました。
最初は1週間に1回くらいの頻度で、2時間くらいの口腔ケアを行い、状態が
良くなったら1~2カ月に1回というように、歯科衛生士が口腔内の状態を管理する
します。そんなにしょっちゅう口腔ケアに通ったら、お金がかかると思われる
でしょうが、スゥエーデンは福祉国家なので、医療費を個人が負担する
必要はないのです。

この国家を挙げた取り組みの結果、スゥエーデンでは虫歯の人がいなくなりました。

さて、私たちの住む日本では、国家がこのような素晴らしい取り組みを
してくれる予定はないようです。歯に限らず、病院に行けば窓口負担があるのが
この国の現状です。
自分の口の中は、自分で守らなくてはなりません。
そうすると、冒頭に話は戻りますが、一日12時間の歯磨きをしなくては
ならないのかということです。

実際問題として無理な、歯ブラシ12時間ではない口腔ケアを、皆さんに
お知らせしたいと思います。

それは、口腔内の細菌の量のコントロールや唾液の量、口呼吸をしていないか、
どんなものを食べているかなど、様々なことを総合的に駆使して行います。

唾液についてフォーカスしてみましょう。

例えば、歯肉マッサージ(当院では自費診療)は、唾液を出しやすくするために、
とても有効です。唾液つまりよだれですが、たかが唾液と侮ってはいけません。

唾液は殺菌作業が非常に強く、たった2ccで虫歯菌の酸を中和させることが
できるのです。
この中和を水で行うとしたら、なんと2トンもの水が必要なのです。

唾液の抗菌作用が働くのは虫歯菌だけでなく、がん細胞にも効果があることが
最近わかってきました。唾液の中にがん細胞を浸すと、2分でがん細胞が
死滅したという報告もあります。

よく噛めば唾液の分泌が増えます。唾液がたくさん出ればがんの予防にも
繋がります。

歯ブラシでは歯だけでなく歯茎もブラッシングしましょう。
歯ぐきのブラッシングで唾液腺を刺激して、これもまた唾液が出易くなります。

唾液を出すためには、硬いものを噛むことも有効です。
野菜を大きく切ればそのぶん噛まなくてはならないので、唾液が出ますね。
わざと大きく食材を切って、たくさん噛むことで唾液が出て虫歯の菌が
減ります。

唾液を多く出すことに加えて菌の数の検査、除菌で菌を減らすことを行なえば、
4時間歯を磨かなくても済むのです。

一生の半分の時間を歯磨きに費やしますか?
それとも、様々なことを駆使して、歯磨きだけに頼らない方法を選びますか?

日本には、歯磨き信仰のようなものがあり、98%の歯科医師は「歯磨きをすれば
虫歯に有効です」と推奨しています。

でも、実際は噛み方、食べ方(硬いものを噛むなど)、大きく切ったもの(一口サイズより
大きく切りましょう)を食べるなどのほうが、ずっと有効だと言えます。

それから、食事中にはお水やお茶を極力飲まないほうが良いのです。
胃酸を薄め消化能力を弱めてしまうことになりますし、あまり噛まずに食べ物を
水で流し込むような食べ方を助長することにもなりかねません。

勘違いしないでいただきたいのは、お茶やお水をとることが悪いのでは
なく、摂るタイミングが大切という事です。

食事中にお水を摂った場合と、食前食後にお水を摂った場合を比較すると、
インフルエンザにかかる確率が5倍も違い、食事中の飲水はインフルエンザに
かかりやすくなります。

八重歯は歯垢を落とすことが出来ない厄介な歯並びですが、これにも唾液が有効
です。

小さい子供は綿棒などで刺激するだけで唾液がでてきますが、前述のとおりよだれは、
とても重要なものなのです。

2歳8か月までに口の中から虫歯菌を無くせば、その後大人になっても虫歯にかかることは
まずありません。

歯磨きも大切です。
でも、唾液をたくさん出すことは、もっと大切なのです。

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