歯科人生で最も嫌な日
私は、ご存知のとおり、歯医者です。
でも、歯医者という仕事に、嫌悪感を覚えるときがあります。
もう辞めたいと思うことがあるのです。
職業柄、どうしたら虫歯や歯周病にならない体質にできるか、
ということを考えています。
その為に、顕微鏡を使って患者さんの口内の菌を調べて除菌したり、
唾液の検査などを行なっったりしています。
何よりも、患者さんの歯を極力削らない治療を目指しています。
例えば、北欧のフィンランドでは、歯医者の数は30年前に比べて、
三分の一に減りました。そのかわり、フィンランド国民の口腔内を
虫歯や歯周病から守っているのは、歯科衛生士さんです。
歯医者がこんなことを言うのは変に思われるかもしれませんが、
日本でも歯医者さんが要らなくなることが、私の望みです。
そういう考えを持っているにもかかわらず、健康な歯を削らなくては
いけないときに、私は歯医者と言う職業に嫌悪感を覚えるのです。
健康な歯を削るのは、一体どういう時なのか、ご存知でしょうか?
歯を失ったとき、ブリッジ、入れ歯、インプラントという、3つの
方法のうちのどれかを選択します。ブリッジを選んだ場合は、無く
した歯の両サイドの歯の表面の半分から三分の二を削らなくては
なりません。
両サイドの歯は、何の問題もない健康な歯であることが多いのです。
私は、この「健康な歯を削る」という事が、嫌でたまりません。
「出来ることならやりたくない」これが本音です。
あるべきものを削るわけですから、当然患者さんにもリスクが
有ります。私がそのリスクを説明しても、費用の面からブリッジを
選択する患者さんはいます。
健康な歯を削るなんて、どう考えても無駄なことです。やるべきでは
ありません。でも、国の方針はその無駄を無駄とは言いません。
ブリッジのために歯を削る方法を選択するように言っているのです。
健康な歯を削ってお金になる、ものすごく非常識な考え方だと思います。
だから、健康な歯を削るたびに、歯医者を辞めたいと、いつも思って
しまいます。
こう考えるのはは、私だけではないはずです。きっと、他の歯医者さんも
同じだと思います。
「保険外の治療だと高いから、ブリッジでいいです」と患者さんに言わ
れると、そのたびに心が痛いのです。
何とかしたいと、ずっと考えていました。
何か良い方法はないものかと。
ところが、最近になって、健康な歯を削らなくていい、そんなブリッジが
出たのです。ナチュラルブリッジと言います。
無くした歯の両隣を歯を削らなくていいのです。
この治療法をとることで、歯医者をやめたいと思うことが少し減りました。
「健康な歯を使い続けて棺桶まで」これが実行できれば、何よりも患者さんの
ためになることだと思います。
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