歯医者で虫歯の菌が移る??!

欧米では、スタンダード・プリコーションという考え方があります。

簡単に言うと、全ての患者さんが感染しているという前提で、滅菌にあたるという考え方のことです。

なぜ、今回のコラムで、滅菌について取り上げようと思ったかというと、読売新聞3年ほど前にで、気になる記事があったことを思い出したからです。

それは、『歯を削る機器 7割使い回し…院内感染懸念』という記事で、3152の歯科医療機関にアンケート調査を行い、891施設から回答を得た結果をまとめたものです。

回答した28%の施設のうちの7割が、滅菌をせずにタービンを使い回しているというのですが、実際はもっと多くの歯科医療機関で、使い回しが行なわれているのではと、思います。

何故なら良くない事実は隠そうとするものなので、28%しか回答していないうちの7割ならば、実際はもっと多く9割くらいの歯科医療機関では、「滅菌せずに使い回す」ことが行なわれていると思われるからです。

タービンとは、歯を削るドリルを取り付ける柄の部分のことで、治療の際には口に入れるため、唾液や血液が付着しやすいのです。

歯を削った後、一瞬引圧がかかり吸い上げてしまいます。つまり、タービンの中に唾液が入ってしまうわけです。

唾液が入ったタービンを、アルコールで拭くだけで使い回している歯医者がほとんどだということは、歯の治療に行って、そうとは知らずに、他の人の虫歯菌を新たにもらってしまう患者さんが数多くいるということに他なりません。

滅菌に詳しい先生による解説動画です。

滅菌という言葉が何度も出てきましたが、聞きなれない方もいるかもしれません。消毒とはどう違うのでしょうか?

滅菌とは、増殖性をもつあらゆる微生物(主に細菌類)を完全に死滅させること。

消毒とは、細菌を少なくする、細菌の活動を弱めること。

つまり、アルコールで拭くだけでは細菌は死なないので、感染の可能性があるのです。

それなら、歯医者さんはどうして感染の危険性がある消毒しかしないのか、疑問に思われても当然です。理由は複数あります。

・日本ではタービンの滅菌機がなくても開業できるから。(欧米では、タービンの滅菌機が無いと開業できません)

・滅菌をすると、熱がこもるため、タービンが壊れやすくなる

・手間と時間がかかる(1回の滅菌に1~2時間かかる)

・患者さんは保険診療が多いため、収入を得るためには人数を多く診ないとならず、時間的にも滅菌をすることが難しいのが実情(欧米では歯科は自由診療なので、収入も多く、一日8人位の診療をすれば事足りる)

・タービンのコストも高い。

そういったことから、国としても安易に取り締まりにくい状況にあるのも事実ですが、それを盾に滅菌をしなくていいという考え方はいけないと思います。

私は以前から、虫歯と歯周病は感染症だと言い続けてきました。

タービンの滅菌をしていない歯医者に行くと、言い方は悪いですが、自分の前に歯を削った患者、またはその前の前の患者の唾液を
有無を言わさず突っ込まれているわけです。

歯の治療をして見た目はきれいになっても、口の中は赤の他人の虫歯菌が追加されていたりして…。想像するだけでも恐ろしい話ですね。

但し、ミラーなどの基本セットについては殆どの歯医者で滅菌をしているので、安心していいと思います。

タービンを滅菌する機器で優良なのは、ダックユニバーサル2で、ドイツの会社が製造しています。ヨーロッパ基準(クラスS)をクリアしており、滅菌時間も30分で済むうえ、内部と外部の滅菌と注油が出来るので、タービンが壊れにくいというスグレモノです。

歯医者を選ぶなら、ダックユニバーサルを備えている歯医者をHPで探すことをお薦めします。

もちろん当院もダックユニバーサル2でタービンを滅菌していますので、現在治療中の方も、虫歯を治療する歯科医をお探しの方も、どうぞご安心ください。

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