健康保険適用の歯科治療をすればするほど、歯は削られ、死んでいく
新年早々、コラムのタイトルが「『歯が死んでいく』だなんて、縁起でもない」と、思われたみなさん、すみません。
でもこれは、脅しでも何でもない、本当のことなのです。
虫歯が出来て、歯が痛くなって、歯医者さんに行って、健康保険を使って歯を削って、保険が使える詰め物をして・・・。
このような経験がある人は、かなりの割合でいることでしょう。
むしろ、生まれてこのかた、虫歯になったこともなければ、歯を削った経験もないという大人のほうが珍しいと思います。
今回コラムで取り上げるのは、健康保険を使って歯を削る治療をすることは、非常に危険で、いずれは歯を失うことになりますよ、というお話です。
にわかには信じがたいかもしれません。
信じられないという人の根拠は、「健康保険は国の制度でしょう?国がやっていいと言っている治療で歯が死ぬなんて、おかしい。国の制度は安全なものを薦めているはずだから。」というところではないでしょうか?
なんといっても国の制度ですから、国民の歯をダメにするはずがない
でもこれは完全に皆さんの思い込みです。あなたの歯科治療に対する知識は間違っています。
その間違った知識を正しいものに変えないと、大変なことになるのは、あなたやあなたの家族です。
厳しいことを書きました。
何がどう間違っているのか、順を追って説明したいと思います。
虫歯が出来て、歯科医院で歯を削ってもらったら、何かを詰めますよね?
なぜ詰めるのかというと、歯は再生しないので、削って穴をあけたままにしておくと、穴はいつまでもふさがらないからです。
そこで何かしらの人工物をはめ込むわけですが、接着剤を使ってもミクロン単位の隙間がどうしてもできてしまい、その隙間から虫歯菌が入り込み、見かけ上はふさがれている治療箇所の下に虫歯ができてしまうのです。
治療に行くと、前に治したはずの歯がまた虫歯になった、そんな経験をお持ちの方も、いらっしゃることでしょう。
歯を削れば、虫歯菌に接する面積が増え、また虫歯になり歯を削り、さらに虫歯菌と接する面積が増え、また虫歯になり…。
これを繰り返したら、歯が無くなってしまうのはお分かりかと思います。
「国が作った健康保険制度を使えば使うほど、歯が削られる。削られた歯は死んでいく。」ということをご理解いただけましたか?
MI(ミニマム・インターベーション)最小限しか削らないという考え方があります。
日本では予防のために多めに削ります。
痛いということは健康な個所が削られているということです。
「歯はできるだけ削らないほうがいい」
この考え方は、一般的な日本人にはまだ浸透していませんが、日本よりも歯科治療の進んでいる欧米では、当然の考え方であり、最近歯学部を卒業した歯科医たちとっても常識なのです。
でも、歯科医のライセンスは一度取得したら更新したり再講習を受けたりする必要がないので、ひと昔以上前に歯学部に在籍していた歯科医は「虫歯の部分はなるべく多く削って、虫歯の取り残しを防ぐ」という、古い考え方で教育されていたので、その考え方を持ち続けたままの歯科医師も存在します。
また、患者さんの歯を削りたくないけど削らざるを得ないという歯科医もいます。
歯科治療は健康保険が使えます。そして、歯科にたいする治療で保険点数として請求できるのは、歯を削る、抜く、詰める、被せるという治療です。
歯科は医科に比べて保険点数が低いため、少しでも多くの患者さんの歯を削らないと、赤字になってしまうという、経営上の問題から歯を削る治療をする歯科医もいます。
勿論、虫歯が進行していたり、詰め物や被せものをする必要があるときは、歯を削らなければなりません。
治療のために、本当に削る必要がある場合と、削らなくてもいいのに削られてしまう場合とがあることを、患者さん側が知っておく必要があります。
そもそも、口の中にいる虫歯菌がいなくなれば、虫歯になることもありませんよね。
歯周病もしかりです。
口の中の菌をなくすには、除菌をすることが何よりも有効です。
また、ブリッジは健康な歯を削らなければならないので、歯を削りたくないという考えの歯科医や患者さんにとっては、本当に仕方なしの選択肢でした。
ところが、最近、ナチュラルブリッジという、健康な歯を削らなくてよい治療法が確立されました。
歯を削らない治療というものがあることを、ぜひ知っていただきたいと思います。