歯周病は全身症状の1つ
歯周病は全身症状の1つ!?
歯周病のイメージはどうですか?歯の周りの骨や歯茎がなくなって(歯周組織)が溶けて歯が抜けてしまう病気ですね。
上の歯周病内科(薬で治る歯周病の項)でもお話したのですが、いろいろなカビ・細菌などが歯周病に関与しています。
ですが、私が見るにたくさんのカビ・細菌がいても歯周病を発症されていない方が多数おられます。
そうです、極端に言うと小さなお子様でカビ・細菌がたくさんいるにもかかわらず、歯周病が発症していません。
それはどういうことでしょうか?
歯周病を発症しないために
そう、体そのものの 「免疫」が関係しているみたいです。例えば「糖尿病・心臓病」など免疫が働きにくい方は歯周病になりやすいことが報告されています。
日常では便秘・貧血・精神的なイライラなども非常に免疫力に関係しています。便秘は血を滞らせて(漢方で淤血(おけつ)という)血流障害が起こり、全身の一部の症状として歯茎がはれたり歯の周りの骨が溶けたりします。
貧血なども酸素の運搬不足なので全身の症状として、歯茎や歯の周りの骨に出ます。
精神的なイライラなども、自律神経に作用して免疫物質を出にくくする為、これもまた歯茎や歯の周りに影響します。
つまり体全体の健康・気力などもトータルにサポートできることが歯周病を発症しない早道であると(どんな病気でもそうですが)当院では考えております。
糖尿病との関係
歯周病は、糖尿病の合併症と考えることもできます。
事実、糖尿病に罹患している人と罹患していない人を比較すると、明らかに前者の方が歯周病に罹っている人が多いというデータが出ているのです。
そして、歯周病に罹ると糖尿病の症状も悪化していくということがわかってきています。
つまり、歯周病と糖尿病というのは、相互に悪影響を及ぼし合っていくのです。
では実際、どのような仕組みで歯周病が糖尿病を悪化させていくのでしょうか。
それは、歯周病菌が分泌するエンドトキシンという毒素が関係しています。
糖尿病は、インスリンという血糖値を下げるホルモンに、何らかの異常が生じることで発症します。
そして、歯周病菌が分泌するこの毒素は、血液中のインスリンの働きを邪魔するため、結果として、糖尿病の症状を悪化させるのです。
ですから、歯周病の治療を行うことは、糖尿病の症状を改善することにもつながると言えます。
骨粗鬆症との関係
骨粗鬆症は、閉経後の女性に多い病気と考えられています。
これは閉経後にエストロゲンという骨を作ることを促すホルモンの分泌が低下するためと思われます。
全身の骨というのは、絶えず新しいものに作りかえられているのをご存知でしょうか。
これを骨のリモデリングと呼びます。
ですから、常に一定の量の骨が破壊され、一定の量の骨が新生されているのです。
ここでもし、骨粗鬆症のように、骨の新生が抑制されるような全身症状が現れてしまったら、骨はどんどん脆くなっていきます。
それは歯を支えている歯槽骨も例外ではありません。
歯槽骨が脆くなると、歯に動揺が生まれ、炎症反応なども合わせて生じてきます。
そうして歯周炎の症状が進行していき、歯周病が悪化していくのです。
誤嚥性肺炎との関係
誤嚥性肺炎とは、口に入れた食べ物を誤って気管や肺に飲み込んでしまい、その結果として肺炎を起こすといったものです。
本来、このような誤嚥が起こった場合には、咳き込んだりすることで、異物を体外へと排出します。
しかしながら、高齢者のように、反射や筋力など、全身の機能が衰えてしまっている場合には、異物を吐き出すことができません。
つまり、誤って飲み込んでしまったものは、気管や肺に留まり続けるのです。
そして、この食べ物の塊には、口腔内の細菌も付着しているということを理解しておきましょう。
口腔内には、ミュータンス連鎖球菌のような虫歯の原因菌や歯周病菌などが無数に存在しています。
こうした細菌群が肺へと到達することによって、誤嚥性肺炎が引き起こされるのです。
ですので、歯周病を予防することは、肺炎のような全身疾患を予防することにもつながると言えます。
妊娠との関係
妊娠をすると、体内のホルモンバランスが大きく変化していきます。
その中でも歯周病と関係が深いのが、エストロゲンという女性ホルモンです。
このエストロゲンは、歯周病菌の増殖を促すことが知られています。
また、プロゲステロンはプロスタグランジンという炎症を誘発する物質を刺激するため、その結果として、歯肉にも炎症を起こすと言われています。
これが、妊娠性歯肉炎の発症メカニズムです。
妊娠時には、これらのホルモンが通常の数十倍にも増加するため、妊娠性歯肉炎が発症しやすくなるのです。
このように、歯周病というのは、口腔内だけでなく全身状態と深い関わりのある病気であると言えます。
それだけに、全身の健康管理も疎かにはできません。